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【やきもののお店訪問:53】大串翠紅堂

2021年05月08日

有田観光協会 at 10:00  | 窯元探訪・やきもののお店訪問
皆様に有田の窯元・やきもののお店をご紹介する【窯元探訪・やきもののお店訪問】。

今日は、有田町戸矢地区で、有田焼の色絵磁器に使われる上絵具と釉薬を製造・販売されている『陶芸用上絵具専門店 大串翠紅堂』をご紹介します。
【やきもののお店訪問:53】大串翠紅堂

『大串翠紅堂』のルーツは、社長の中原 康さんのひいおじい様が辻精磁社で絵付け職人をされていたことから明治時代に泉山地区で赤絵屋を始められたそうです。赤絵屋とは色絵の具で上絵付をする職人のことで、自分のところで絵の具も作っていたそうです。
絵の具の評判が良く、大量生産が追い付かなくなったため、以降、絵の具専門になったとのこと。
1997年ごろ、泉山地区の工場が手狭になったため、有田町と長崎県波佐見町の県境近くの戸矢地区に移転されました。

【やきもののお店訪問:53】大串翠紅堂
有田町、嬉野市の吉田、長崎県の波佐見などの窯元をはじめ、
東京、大阪の陶芸教室から注文が入ったり、京都からは特注されるところもあるそうです。

【やきもののお店訪問:53】大串翠紅堂【やきもののお店訪問:53】大串翠紅堂
お店の入口には自社製品の絵の具を使って伝統工芸士の方が描かれたドアの把手(とって)が目を引きます。美しい色ですね。

【やきもののお店訪問:53】大串翠紅堂
お店の奥の棚にはたくさんの絵の具が。有鉛、無鉛と別々の棚に並んでいます。
上絵の具は絵付けをする時の色から焼成された時の色合いが変化するものがあり、全て把握するのは大変そうです…!


上絵の具の元々の原料は磁器と同じ「陶石」。陶石を砕いて、るつぼに入れて1300℃の温度で溶かし、水を張った容器に入れて急速冷却しガラス状にします。これを「フリット」と呼びます。
【やきもののお店訪問:53】大串翠紅堂
こちらはその原料の「フリット」でキラキラしていてとっても綺麗です。
触らせてもらいましたがガラスそのものでした。

【やきもののお店訪問:53】大串翠紅堂
こちらは「るつぼ」これで原料を高温で液状にします。使い込まれていて表面がガラス状に固まっていてつるつるしています。

【やきもののお店訪問:53】大串翠紅堂
フリットをさらに砕いて、粉状にしたものがこちら。この粉に銅や金、マンガンなどの鉱物を混ぜ様々な色を作り出します。
やきものには必要不可欠な絵の具はこんな道具や材料で作られているんですね

【やきもののお店訪問:53】大串翠紅堂
鉱物を配合して溶かして砕いたものがこちら。これはマンガンが含まれる絵の具です。
色をつける際の鉱物の割合はフリットの量に対してだいたい3%とのことです。

【やきもののお店訪問:53】大串翠紅堂
ちなみに金を溶かしたものは焼くと紫色っぽい色になります。
金は王水という特別な溶液でしか溶けないそうで、焼きあがると渋い紫色のような「マロン色」になります。
また金や銀の色を出すにはさらに粒子を大きくして混ぜるとそのままの金色や銀の色が出るそうです。
硝酸に溶かすと黄色になるそうです。同じ物質でも粒子の大きさや溶液が色に関係してくるんですね。

【やきもののお店訪問:53】大串翠紅堂【やきもののお店訪問:53】大串翠紅堂
葉っぱの絵などに使う緑色でも合成顔料の「葉みどり」や金属を加えて作る「もよぎ」があるそうです。
また、「もよぎ色」は有田で主流ですが、大川内山では「うす青」が多く、地域でも主流の色や人気色が違います。京都などでは「みやび色」というほんのりシックな色やパステル系の色が人気だそうです。

【やきもののお店訪問:53】大串翠紅堂
こちらは色のついたカラーフリット、透明感があって金平糖みたいできらきらしていて綺麗です。これを砕くと絵の具になります。

【やきもののお店訪問:53】大串翠紅堂
こちらは破片に塗られた色見本。ダークな色からポップなカラーリングなど様々な組み合わせを見せてもらいました。

【やきもののお店訪問:53】大串翠紅堂
江戸時代から使われている古代色や美術品などの鮮やかなものは有鉛絵の具だそうです。
無鉛絵の具にすると色数が減るそうですが、「有田にある色ならなんでも作る、有鉛も無鉛もどっちも作ります」と中原さん。
「江戸時代から続く時代ごとのはやりの色を無鉛の絵の具で再現したい」「伝統的な色も守っていかなければいけないけれど、その時代ごとの流行色を作るのはもちろん、更に新しい色も作っていきたい」とのこと。
上絵の具も時代や地域で様々な特色があると知りました。

現在は工場の見学等はできませんが「機会があれば原材料から絵の具を作る工程の体験と絵付けのツアーのコラボもやってみたい」というお話も。
オリジナルで自作の絵の具を作って絵付け体験までできたら、モノ作り好きにはたまらない特別な体験になりそうですね。今後に期待したいです!

「大串翠紅堂」では有鉛絵の具、無鉛絵の具にかかわらずオーダーも受け付けるそうです。
こんな色が欲しい!と、陶磁器用の絵の具のことならプロからアマチュアの方までどなたでもご相談を受け付けるとのことです。

【やきもののお店訪問:53】大串翠紅堂
本日は、大串翠紅堂の社長、中原 康さん にお話を伺いました。

「大串翠紅堂」
〒844-0014
佐賀県西松浦郡有田町戸矢乙1271
TEL:0955-42-2563
E-mail:suikodo@po.saganet.ne.jp
営業時間:9:00~18:00
定休日:日・年始年末
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