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準備の裏側

【ガイド研修講座第9回】幸楽窯・前半編

2021年08月26日

有田観光協会 at 12:00  | 観光ガイド研修
有田を観光する際に、史跡や有田に関する豆知識などをより楽しくディープに知ることができる有田観光協会の「観光まちなかガイド」。
定期的に行われている、観光ガイド研修の様子を本日もレポートします。

第9回は「幸楽窯」と「アリタポーセリンラボ工場」、
今回は前半後半で分けてレポートします。

前半は丸尾地区にある幸楽窯。創業150年の窯元です。 (幸楽窯のARITAJINの記事はコチラ)

【ガイド研修講座第9回】幸楽窯・前半編【ガイド研修講座第9回】幸楽窯・前半編

今日は徳永社長に新しく作られた「アドベンチャーマップ」に沿って工場内をご案内していただきました。
幸楽窯の工場は元は上有田にあった小学校の校舎を昭和40年に移築して作られたものです。木造の歴史ある建物ですが、屋根にはソーラーパネルを導入されていて、現代らしさも持ち合わせています。

有田ではやきものづくりは分業で、それぞれの工程を専門に担う会社もありますが、幸楽窯では型を作るところから全行程を行っています。

【ガイド研修講座第9回】幸楽窯・前半編【ガイド研修講座第9回】幸楽窯・前半編
マップに沿って工場見学スタート。入り口に入ってすぐの所には石膏型がずっと奥まで続いていて圧巻!肥前地区の磁器は現在九割以上が石膏型で作られており、石膏型はほとんどが外注だそうですが、幸楽窯では型を作る職人、原型師さんがいらっしゃいます。

【ガイド研修講座第9回】幸楽窯・前半編
鋳込み成形の基本の技法「排泥鋳込み」。水分を吸う石膏の特性を使って、厚みを作り、余った残りの泥しょうをひっくり返して(排泥するといいます)抜いて作ります。型の1つの型で40分で1個作ることができます。
何度も型を使うたびに水分を吸う時間が増えるため、2回目は43分、3回目は60分…と職人さんがつきっきりで水分を吸わせる時間調整が必要となり、調整時間は職人のカンに頼る部分が多いとか。

【ガイド研修講座第9回】幸楽窯・前半編【ガイド研修講座第9回】幸楽窯・前半編
「排泥鋳込み」は複数の型を組み合わせることによって複雑な型も作ることができます。
こちらの五月人形は6ピースの型を組み合わせて作られています、兜の裏面の細かい部分もしっかり型で表現されています。

【ガイド研修講座第9回】幸楽窯・前半編
こちらは圧力で鋳込みをする「圧力鋳込み」。有田の鋳込み成形といえば現在こちらがほとんどです。外型と内型を重ね、上から万力のようなものでギューっと押さえつけて、下からニュニューっと内型と外型の隙間に固めの粘土を流し込むことによって作られます。
重なった型と型は連結しているので複数同時に作ることができ、縦1列で12個ほど作れます。
あとは20分置いて水分が抜けると型から外し、内型と外型によって厚みが最初から決まっているので、こちらは職人のカンは必要ありませんが、排泥鋳込みのような複雑な形は作ることができません。


【ガイド研修講座第9回】幸楽窯・前半編【ガイド研修講座第9回】幸楽窯・前半編
こちらはローラーマシン。名前は聞いたことがあったのですが、本物を見るのは初めて。こちらは昭和40年代のものだそうです。粘土がピアノ線でカットされ、均等な量になった粘土を中にセットすると全自動でロクロを回すように、成形される機械です。丸いものしか作れませんが30秒に1個作れるため、大量に作る事ができます。隣に観覧車のようにぐるぐる回る棚があり、ここへできあがったものを載せていっていたそうです。

【ガイド研修講座第9回】幸楽窯・前半編
この棚は天井側まで続いていてまさに工場感がします。かつて三交代でフル稼働していた時代には次々に作られたうつわが載せられていたそうです。

【ガイド研修講座第9回】幸楽窯・前半編
こちらは機械ろくろ、うつわの外形をした石膏型に粘土を入れて回転させ、コテをあてながら、ろくろを回す…というマシーン。5分で1個作れるそうですが、目盛りがないため絶妙なサイズにセットするには職人でも半日~1日ほどかかるそうです。小ロット向け製品に使われ、茶わん蒸しのうつわのような蓋物の蓋だけ作ることもあったそうです。
こうして基本の成形方法は形やロット数に合わせて技法を変えていきます。


【ガイド研修講座第9回】幸楽窯・前半編【ガイド研修講座第9回】幸楽窯・前半編
今回は特別に型の原型を作る原型師さんのいらっしゃる「型場(かたば)」へお邪魔させていただきました。複雑な組み合わせの排泥鋳込みの型など、オーダーの内容を三図面に起こしたものを見ながら作られます。そのままを作るのではなく、より良いものを作る提案をしながらオーダーに対応されていくそうです。

【ガイド研修講座第9回】幸楽窯・前半編【ガイド研修講座第9回】幸楽窯・前半編
入口がわに積まれている青い型は他の石膏型と何が違うかというと、これは「石膏型の型」。
幸楽窯のロングセラー商品などは、何度も何度も石膏型を使っているうちにボロボロになっていくので都度、新しく石膏型を作り直します。その原型がこの青い型。昔からのロングセラー商品もこうして原型を大切に保管されているからこそ、今でも作り続ける事が出来るそうです。石膏型は色んな窯元でも見かけますが、「石膏型の型」は初めて見ました。

【ガイド研修講座第9回】幸楽窯・前半編
ガラス張りのこちらは乾燥室。成形した生地は急激に乾燥させると亀裂が入ったり歪んだりするため、通常は自然乾燥させますが、幸楽窯では大きなガス式ヒーターの乾燥室を使って乾燥させます。大量生産をしていた頃の名残でこうした大きな乾燥室があるんだそうです。

【ガイド研修講座第9回】幸楽窯・前半編
幸楽窯の工場のガイド研修レポート、前半の今回はここまで。
マップに沿うとここまでで工場の中の約半分です!幸楽窯後半編に続きます!お楽しみに!




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