目的で探す

準備の裏側

【窯元探訪:30】今村製陶 町屋

2020年08月04日

有田観光協会 at 12:50  | 窯元探訪・やきもののお店訪問
皆様に有田の窯元・やきもののお店をご紹介する【窯元探訪・やきもののお店訪問】。

今日は『今村製陶 町屋』をご紹介します。

【窯元探訪:30】今村製陶 町屋

『今村製陶町屋』は、2014年に創業された窯元です。
歴史ある建物が立ち並ぶ、国の重要伝統的建造物群保存地区である有田町内山地区の西側に位置する町屋で、やきものの製造と販売をされています。少人数でありながら、受注から制作、発送まですべての作業を今村製陶で行っているそうです。

【窯元探訪:30】今村製陶 町屋 【窯元探訪:30】今村製陶 町屋

有田町にある陶悦窯(※陶悦窯のブログ記事はコチラ)の弟である今村肇さんが、2012年に新たなやきものの新ブランド「JICON(ジコン)」を立ち上げられました。そのブランドをメインとして制作するため『今村製陶』を開窯されたそうです。

【窯元探訪:30】今村製陶 町屋
「JICON(ジコン)」の特長は、"ハーフマットな質感と生成りの白"。
有田焼の多くは、青みがかった白い磁器ですが、JICONを開発するにあたり、ありのままの陶石の色を表現したいと考えた今村さんは、土の配合から釉薬の配合、焼成にいたるまで、工程すべてを見直し、開発されたそうです。
通常有田焼は、還元焼成という方法で制作されます。還元焼成とは、本焼きの際、作品が酸素と触れないようにしたり、生地の中の酸素を奪い取らせるようにする焼き方です。燃料が燃えるには、酸素が必要ですが、炉内の酸素が少ないと、釉薬の中の酸素を奪って燃やそうとする力が働きます。この焼成方法により、磁器の青みがかった白が出来上がります。
これに対して、JICONは、酸化焼成という方法で焼成されます。還元焼成とは逆に炉内に十分な酸素がいきわたった状態で焼く方法で、これにより生成りの白とハーフマットな質感を表現することができるのだそうです。

【窯元探訪:30】今村製陶 町屋
そんなJICONブランドの開発のきっかけは、生活用品デザイナーの大治将典氏との出会いからだったそうです。
大治さんが手掛ける"産地のメーカーとタッグ組んで新しいものを作り出す"という事業に共感し、大治さんをデザイナーに迎えブランド開発に取り組まれたそうです。
新ブランドのコンセプトは、"自分が欲しいもの、使いたい物を作る"。
「金額に見合ったものを制作するとか、流行のものだから開発するという事に疑問を持つようになり、自分が本当に欲しいものは何だろうと考えるようなったんです。」と当時のことを思い、語る今村さん。
その想いを突き詰めて、JICONでは、自分が使いたいものや店に置きたいものだけを作ると決められたそうです。

【窯元探訪:30】今村製陶 町屋
JICONブランドの第1号の商品は「飯碗」でした。
「デザイナーから飯碗の提案を受けた時は驚きました。飯碗はたくさんの窯元が作っているものですから、敢えて最初の商品を飯碗にする男気を感じましたね。」この提案に感銘を受けたという今村さん。
飯碗は、ベーシックで古き良き"昔"を感じさせるものをイメージして制作されました。伝統的でありながら、サイズを昔のものより少し大きめにして現代の食生活に合うよう考えてあります。シンプルですが、実に手に馴染む飯碗です。

【窯元探訪:30】今村製陶 町屋 【窯元探訪:30】今村製陶 町屋
こちらは、2020年2月に発売された新商品です。JICONの特徴である生成りの白ではなく、カラー展開した商品です。
コンセプトは"生成りの隣に合う色"だそうで、JICONの白の差し色として、幽けさ(かそけさ)をキーワードに優しい色合いを展開されています。
色味を探り、試作を繰り返し、日本古来の色に辿り着いたそう。新色は、淡いグレーのような『浅葱鼠(あさぎねず)』、緑がかった黄色の『菜花黄(なばなき)』、『錆茶(さびちゃ)』の3色です。
形状は菊紋や八方割という伝統的な形状を取り入れることで和洋どちらにも合い、控えめなカラーによって料理が映える器を制作されました。新商品も評判は上々です。


【窯元探訪:30】今村製陶 町屋 
今村製陶町屋の2階には、有田町出身の作家や、有田に移住してこられた作家など、有田にゆかりのある作家の商品が展示販売してあります。
【窯元探訪:30】今村製陶 町屋 【窯元探訪:30】今村製陶 町屋
こちらは、有田町出身の川口武亮さんの器と、東京出身で有田でやきものを学び移住された山本亮平さんの花器です。

【窯元探訪:30】今村製陶 町屋 【窯元探訪:30】今村製陶 町屋
こちらは有田窯業大学でやきものを学び、大分で作陶をされているヨシノヒトシさん、よしのちはるさんご夫婦の作品です。
今村さんは、もっと有田町の方にも作家のみなさんを知ってもらいたいという気持ちから展示販売を始められました。
気軽にお店に立ち寄って頂いてご覧になってもらいたいそうです。


「今の若い方は、有田焼だから買うという感覚はないように感じます。好きなものを手に取ったら有田焼だったという声を聞きますね。」
そんな若い世代に受け入れてもらえるような現代の感覚と、伝統的なものづくりを同時に具現化する今村さん。
JICONの名前には、"磁今(じこん)"という漢字が当てられており、そこに込められているのは、"今(現代)に創る磁器"であり、"今村家が作る磁器"であり、また仏教用語"爾今(じこん)"の今を生きるという意味です。
コロナ禍において生活が見直されている中、今だからこそ「今欲しいものだけ」を作陶する今村さん姿勢に、ものづくりの原点を見たような気がします。
【窯元探訪:30】今村製陶 町屋
本日は社長の今村肇さん、店長の今村麻希さんご夫妻にお話を伺いました。


今村製陶 町屋
佐賀県西松浦郡有田町岩谷川内2-4-13
TEL:0955-43-4363
E-mail:info@imamura-porcelain.jp
営業時間:11:00~17:00
定休日:火曜日・不定休





  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

同じカテゴリー(窯元探訪・やきもののお店訪問)の記事画像
【窯元探訪:60】江頭製陶所 利久窯
【窯元探訪:58】金善製陶所
【有田のお店訪問:70】貴兆陶家
【有田のお店訪問:69】SPICE HOTARU
【有田のお店訪問:68】杏慕樹(あんぼじゅーる)
【有田のお店訪問:67】祐徳旅行株式会社 伊万里営業所
同じカテゴリー(窯元探訪・やきもののお店訪問)の記事
 【窯元探訪:60】江頭製陶所 利久窯 (2022-07-08 15:00)
 【窯元探訪:58】金善製陶所 (2022-04-06 16:00)
 【有田のお店訪問:70】貴兆陶家 (2022-03-24 14:00)
 【有田のお店訪問:69】SPICE HOTARU (2022-03-05 13:00)
 【有田のお店訪問:68】杏慕樹(あんぼじゅーる) (2021-08-25 10:00)
 【有田のお店訪問:67】祐徳旅行株式会社 伊万里営業所 (2021-08-19 14:51)