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【窯元探訪:29】玉峰窯(ぎょくほうがま)

2020年07月25日

有田観光協会 at 11:18  | 窯元探訪・やきもののお店訪問
皆様に有田の窯元・やきもののお店をご紹介する【窯元探訪・やきもののお店訪問】。

今日は『玉峰窯(ぎょくほうがま)』をご紹介します。

【窯元探訪:29】玉峰窯(ぎょくほうがま)

『玉峰窯』は有田町の隣町、武雄市山内町にある、昭和31年に創業された窯元です。
ギャラリーは、有田の歴史ある町屋が立ち並ぶ、国の重要伝統的建造物群保存地区である有田町内山地区の中央エリアに位置し、玉峰窯のブランド「銀河釉」という店舗名で営業されています。
【窯元探訪:29】玉峰窯(ぎょくほうがま) 【窯元探訪:29】玉峰窯(ぎょくほうがま)

創業当初は、玉峰陶園という名称で、花器を専門につくる窯元でしたが、時代の流れとともに、花器の需要が落ち込んできたため、食器や茶道具など、他の器を作り始めたそうです。
そして、新しい器つくりへの模索、新しい釉薬の研究の成果が「銀河釉」の誕生をもたらしました。

現窯主である中尾哲彰さんは、大学で哲学を学び、学者を目指していましたが、ある時やきものを作る父親の姿に感銘を受け陶芸家になることを決意したそうです。
作陶家として制作に力を注ぐ中、哲彰さんは目を患い、約1年の入院生活を余儀なくされました。その時に、「みんなに光を与えられるものを作りたい。」と強く思ったそうです。
そこから十数年の研究の末、生まれた燿変結晶釉が「銀河釉」でした。
宇宙空間に広がる無数の星を思わせる銀河釉シリーズは、海外を中心に高く評価され、展覧会などで数々の賞を受賞されました。

【窯元探訪:29】玉峰窯(ぎょくほうがま) 【窯元探訪:29】玉峰窯(ぎょくほうがま)
こちらは銀河釉の代表作「銀河のオデッセイ」です。
2003年、イタリアのフィレンツェにて開催された『栄光のネオ・ルネサンス展』にて、"コスタンツァ・デ・メディチ芸術褒賞"を受賞した作品。画像は、その姉妹品です。
イタリアの名門"メディチ家"が優れた芸術家と認めた人に贈られるシリアルナンバー入りの証明書も発行されており、これは、芸術家・ミケランジェロにもシリアルナンバーを贈られていることから、いかに名誉ある賞であるかが分かります。
この銀河のオデッセイは、直径50cmを超える大きな作品であるため、釉薬をかけるのも二人がかりの大仕事だったとそうです。哲彰さんが陶芸家となるきっかけを作った父親と二人で釉薬をかけた思い出としても大切な作品だそうです。
その後この作品は、メディチ家からの推薦があり、"ヴァチカン聖なる創造展"へ出品され、ヴァチカン市国に展示されました。神へ捧げる神聖な場所への展示のため一般公開されず、特別に許された人のみ見ることができるものだったとそうです。
これが縁となり、2019年11月に現ローマ教皇が長崎へ訪れた際にも、"日本二十六聖人記念館"に展示されました。

【窯元探訪:29】玉峰窯(ぎょくほうがま)
こちらは2003年『美の革命展inルーブル』において、陶芸部門のグランプリ "プリ・デ・リオン"と、"トリコロール芸術平和賞" をダブル受賞した作品「東洋の記憶」の姉妹品です。
賞を受賞した「東洋の記憶」には、実は画像のような金彩がありません。この金彩は、制作した当初にはなかったデザインなのだとか。というのも、国内の展覧会で展示された後、作品が破損しており、それを修復するため、優れた金継(きんつぎ)技術を持つ方を探し、日本古来からの修復技術によって復元することができたそうです。
「生まれ変わった作品は、金がアクセントになっていい味を出しているなあと思ったんです。面白さがあるというか。」と語るのは、奥様の知佳子さん。
このトラブルが無ければこの味わいには出会えなかったといいます。
ひとつの物を大切にするという日本人の気持ちが技術となって受け継がれていることを感じたそうです。

【窯元探訪:29】玉峰窯(ぎょくほうがま) 【窯元探訪:29】玉峰窯(ぎょくほうがま)
銀河釉の作品は、すべて手作りです。大きい物でも1本の粘土から作られます。上半分、下半分と分けて制作し"継ぐ"という制作方法もありますが、銀河釉は、ひとつの土の塊から作られているそうです。
上記の「東洋の記憶」のような形状の作品でも変わりません。これだけを見ても、高い技術を要する作品だということが伺えます。
更に、形や風合いから一見質量を感じますが、持ち上げてみると、意外な軽さ。ろくろの技術で軽くなるよう制作されています。店舗では、茶道具の水指を、実際にお客様に持ち上げていただいて、その重さを体験して頂いているそうです。

【窯元探訪:29】玉峰窯(ぎょくほうがま) 【窯元探訪:29】玉峰窯(ぎょくほうがま)
また、色は青のイメージがありますが、カラーの基本は、上の画像の左から"春銀河"、"夏銀河"、"秋銀河"、"冬銀河"、"睦月銀河"の5色。しかし、同じ春銀河でも色合いや色の出方はそれぞれ違います。
色も形も同じものはひとつとしてない、世界で唯一の器です。
ですから、2020年のゴールデンウイークに行われた《WEB有田陶器市》では、在庫1個として、商品画像を掲載し、売れると次の商品画像を掲載するという大変手間がかかる方法をとられたそうです。


「作陶は自然との闘い。火、土、水vs知恵。そこに面白さがある」と哲彰さんは言います。銀河釉は釉薬のコントロールが非常に難しいそうで、それでも哲彰さんは、常に新しいもの、出会ったことがない新しい色に挑戦する意欲に溢れています。
そのモチベーションの先には、お客様がいるといいます。
「賞や名誉ではなく、お客様が純粋に作品を見て、"綺麗"、"美しい"といってくれる事が嬉しいんですよ。お客様から、銀河釉のカップでコーヒーを飲むのが自分の癒しになるといった声や、自分へのご褒美として購入したという話を聞けることが新しい作品を生み出す力になっています」

哲彰さんが、"みんなに光を与えられるものを作りたい”という気持ちから開発された銀河釉。
その気持ちは、器を通してお客様に届いているようです。

【窯元探訪:29】玉峰窯(ぎょくほうがま)
本日は、奥様の中尾知佳子さんにお話を伺いました。

玉峰窯
佐賀県西松浦郡有田町大樽2-3-5
TEL:0954-45-2147
営業時間:11:00~17:00
定休日:不定
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